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花が好きな貴女へ(GBA2005ノベル) [ゴールデンブログアワード]

事の真偽なんて必要ない場合がある。
正しいか、正しくないか、本当か、嘘か、そんな事はどうだっていい。
少なくとも私にとっては。
私にとって一番好きな話であり、一番大事な話であり、一番胸を突く話であるという、その事こそが重要であり、それ以外の事は瑣末な事である。

あれは何の雑談をしていた時だっただろうか。

「ねぇ、ネアンデルタール人のお墓の話って知ってる?」

「ん?知らないけど?」

「なんかね、ネアンデルタール人のお墓の周りの土を調べたら沢山の花粉が出たんだって。
 だからね、ネアンデルタール人は埋葬する時に沢山のお花を供えたんじゃないかって。」

へぇ、初めて聞いた。
私はしばしその情景を思い浮かべた。
沢山のお花で死者を弔う姿を。
そして、次の瞬間、ポロリと涙がこぼれた。
泣くわけではなく、涙が落っこちた感じ。

「武器でも、宝石でもないんだねぇ・・・」
私はそう言って、気付かれないように瞬きを止めて目を乾かした。

私達の祖先はネアンデルタール人ではないらしい。
でも、ほんの少しでもいいからその血が混じってるといいなぁ。
いや、混じってる。
絶対混じってる。
だって、花が好きだった祖母の棺の中を、あんなに沢山の花で埋め尽くしたではないか。
父の棺の中も・・・。

古代の偉い人々の墓は生きた当時の権力を誇るものだ。
古代でもなく、現代の墓も権力のある人程大きくなる傾向があると思う。
父の墓を購入する際、墓石屋さんに霊園を案内して貰った。
そして、ふと、ある区画に目が止まった。
まだ墓は建ってなかったが、そこは通常の区画の5倍はあろうかという程広かった。
そこはとても人気のある霊園で一区画手に入れるのさえ抽選になる程の所なのに。
私が立ち止まったからであろうか、案内をしてくれた墓石屋さんが、とある政治家の名前を告げて、
「まだお墓は建ててないんですけどね、なんでも横に長い御影石に自分が残した功績をズラーっと年表のように彫りたいらしいですよ」と、言った。
私が不味い物を食べた時のような顔をしたからだろうか、墓石屋さんはクスっと笑った。

その後、私は、ネアンデルタール人が死者に花を手向けたという説が怪しいものである事を知る。
でも、それが何だというのだろう?

そして、私は、あろう事かこんなにも心に残る話をしてくれた人と喧嘩別れをしてしまった。

どうして喧嘩なんかしてしまったのだろう?
喧嘩するつもりなんて無かった。
それどころか、慰めようとして、あるいは、励まそうとしてかけた言葉であった。
しかし、それが逆鱗に触れてしまった。

今から思えば軽はずみな言葉だった。
慰めるつもり、と言いつつ、自分の意見の押し付けだったように思う。
私の方が悪かった。
今ではそう反省している。
しかし、当時は違った。
狭量だと腹を立てた。
そんな程度で怒るなんて、と思ってしまった。
そして、謝るタイミングを失してしまった。

今でも時々、「おっ!」と思ったり、「これは!」と思ったりした事を話したくなる。
感情を共有したくなる。

「アナタノコエガキキタイデス・・・」

これは罰だ。
私の罪に対する罰なのだ。
もうあれから10年経った。
今なら許して貰えるだろうか?

花が好きな貴女へ

「ゴメンナサイ」

*************************
これは小説で~~~~すw
紛らわしくてスンマセンw
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*************************
ちょい加筆(11月7日)
*************************


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コメント 17

yamaki

今度はどこのスナックかって思ったら…
じっくり読んでしまいました。
死んだあと?家族の近くで眠りたい。それだけ。
できれば死を迎えるとき人に感謝し、感謝されるような生き方をしたい
と、つい先日あるTVを見て思いました。
んー、この記事へのコメントは難しい。
by yamaki (2005-11-03 10:44) 

nobu

10年か…長いようでつい最近て気もする期間ですね。
ひょいと戻れるのなら…どうするだろ。

手紙とか贈られては…メールや電話にない何かが葉書にはあるように感じてます、電子化が進んだ今だからこそ葉書だからこそ伝えられる心があるような…私は葉書はご無沙汰ですが(笑)

死んだら…土に戻ればそれでいいかな。特別な何かではなく、純粋に生きて朽ちた生き物の一個体として…墓じゃなく誰かの心にふと思い出してもらえる人であれたなら最高ですね。
by nobu (2005-11-03 18:42) 

あの・・・私も信じます。ネアンの話。それでいいと思います。それに、そうであって欲しいと思います。
by (2005-11-03 21:07) 

kyamerou

こんばんわ、パラナさん。

ネアンデルタール人の献花の話は有名だと私は思っていました。なんでも死を意識し始めたのが丁度旧人(ネアン)あたりかららしいです。ホモ・サピエンスになるまでにも脳はどんどん発達して死を認識するようになったらしい。母猿が死んだ子猿を離すのは、腐食が進んだときだから、よくわからないうちに子供がいなくなってしまってる感覚なのかも。
 
by kyamerou (2005-11-03 21:53) 

Silvermac

あって、話をすればスッキリすると思いますよ。それも早く。
by Silvermac (2005-11-03 22:36) 

リアルすぎでした…。
慌ててるparanaさんに、nice!
by (2005-11-04 07:46) 

あら、偶然。
私は同じような感じで連絡をとれなくなってしまった友人に
ちょうど10年目で勇気をふりしぼって電話をし、
あまりにも優しく受け入れてもらえて、嬉しかったのを覚えています。
素敵なお話ですね。
『このお話のあと…』を想像できね。
私はHappy End 風に想像を膨らませてみます…。
by (2005-11-04 10:39) 

>>「武器でも、宝石でもないんだねぇ・・・」
この言葉、胸に刺さりました。
世界情勢や憲法の行方、そういうことまで考えさせられる一言でした。
by (2005-11-04 17:23) 

parana

>yamakiさんへ

>今度はどこのスナックかって思ったら…
>じっくり読んでしまいました。

いやぁ、急きょ思い立ってブログ小説書きましたw
忘れないうちに書かなくちゃと思って。

>できれば死を迎えるとき人に感謝し、感謝されるような生き方をした
>い

あぁ、いいですねぇ^^
どういう風に死んでいくかってのも考えておきたいものですよね。

>nobuさんへ

>死んだら…土に戻ればそれでいいかな。
>特別な何かではなく、純粋に生きて朽ちた生き物の一個体として…

うんうん、そういう自然な感じがいいですねぇ。
自然には厳しい存在である人類ですけど、せめて最後くらいは自然に寄り添いたいものですよねぇ。

>STEALTHさんへ

>あの・・・私も信じます。ネアンの話。それでいいと思います。
>それに、そうであって欲しいと思います。

うんうん。
最初にそう発表した学者だって「そう思いたい」からそう発表したんだと思います。
死を悼み、そして、花を手向ける。
そういうのって本当にジーーンときますよね。
感傷的と言われようとも、こういう感情は捨てたくないなぁ。

>kyamerouさんへ

>なんでも死を意識し始めたのが丁度旧人(ネアン)あたりかららしいです

うんうん、そう思ってたんだけど、書く前に一応googleで検索かけたんですよ、そしたらそうじゃないって説があってw
「え~~!」とか思って、だから冒頭のような書き出しになった訳ですw
どっちが正しいかなんてもう関係ないや、ってw
花を手向けたっていう方がロマンチックですよね~。

>SilverMacさんへ

>あって、話をすればスッキリすると思いますよ。それも早く。

うんうん^^
今回小説という形態を取りましたが、全部が作り話って訳じゃないんですよね。
やっぱり、謝りたいなぁって思う事があるわけで。
そういうモヤモヤした物を抱えてる人って案外多いと思って書いてみました。
謝るとスッキリするだろうな、と。
しかし、ここで、謝るとスッキリする事が果たして良い事なのか?という問いもあるわけで。
そもそもスッキリしていいの?って思うんですよ。
そこで終了~って感じになって、そこの所で思考が止まるのではないか?って思ったりもするんですよ。
なるべくモヤモヤを抱え込んで、答えの出ない問いを自分に問い続ける事の方が良いような気がするんです。
つまり、とりあえず「10年は抱え込め」って提案もあるわけで。
安易に謝るな、とw
ちなみに私はすぐに謝る人は信用できないです。
すぐに謝る人は同じ過ちを何度も繰り返すもんw
ホント、信用できないw

>shinoさんへ

>慌ててるparanaさんに、nice!

あはははは。
バレました?w
いやぁ、もうちょっと「ブログアワード応募用小説」って事が分かりやすい仕組みになっているといいのにね~。
いつものブログの延長みたいな感じなんだもん。
困惑するっちゅーねん。
しかし、小説なんて初めて書くからどうしたらいいのか分からなくて、いつものような書き方になってしもうたよw
ほら登場人物に名前を付けて物語が展開する方式が一般的でしょ?
でも、それはど~~~しても照れくさくてダメだな、とw
読むのは平気なのにね~。
書くのは照れくさい。
何なの?この感情は?w
多分、下手くそだから照れるんだよね。
上手いとスムーズに感情移入できるんだろうねぇ。
難しいね、小説って。
あ、そうそう、shinoさんも応募しなよ。
無職同士ガンバロウぜいw

>あらよさんへ

>ちょうど10年目で勇気をふりしぼって電話をし、
>あまりにも優しく受け入れてもらえて、嬉しかったのを覚えています

エエ話や・・・。
あ、そうだ!
あらよさん、それエッセイ部門に書けばいいよ^^
ちょうど10年だし。
テーマにもピッタリ♪
うんうん^^
楽しみにしてまーーーす♪

>紅葉館さんへ

>>「武器でも、宝石でもないんだねぇ・・・」
>この言葉、胸に刺さりました。
>世界情勢や憲法の行方、そういうことまで考えさせられる一言でした

うほっ。
良い所に目をつけてくれてありがとう!!
自分の中で伝えたいメッセージってのがあるんですけど、この話の場合、「進化ってなによ?」って事なんですよね。
私達は地球上の生物の中で一番進化した存在だといわれているけれど、それって本当にそうなの?ってギモンなんですよ。
ちっとも地球環境に寄り添えず、破壊ばっかりして。
死者に花を手向けた旧人の方が実は進化してたのかもしれない、って思うのです。
そういう事を込めて書いたので、紅葉館さんがそれを感じてくれてすごく嬉しい^^
どうもありがとう^^
by parana (2005-11-06 01:43) 

かのん

歴史の真実は。
残酷でもあり、優しさでもあると思います。
私はやさしさを追い求めて仕事をしています^^
paranaさんの優しさ^^
身にしみます^^
by かのん (2005-11-06 23:30) 

parana

>かのんさんへ

ううん、優しくなんてないんですよ。
むしろ残酷な程冷たい人間だったりもするし。
でも、優しくありたいなぁ、と精進したいと思ってます^^
生まれつき優しい人にはかなわないけど、経験値から優しさを学んでいきたいなぁって思います^^
by parana (2005-11-07 01:23) 

sultane-0

おはよ^^
最近やっと耳に痛い言葉は自分への戒めだと、ごく自然に思えるようになりました。同時に相手への言葉もかなり吟味しなければならないと、改めて言葉の力を感じています。謝りたい人、ひとりやふたりじゃないな・・・ワタシ。(苦笑)
by sultane-0 (2005-11-07 09:50) 

小説か、ほっ・・・。
胸が痛くなってしまった・・・。
by (2005-11-07 10:01) 

parana

>akiさんへ

>最近やっと耳に痛い言葉は自分への戒めだと、ごく自然に思えるよう
>になりました。

いやぁ、私はまだまだですw
無視しちゃうもん、耳に痛い言葉をw
自戒の意味で書いた文章なのれす。
しかし、ほんと「言葉」って難しいし、恐ろしいな、って思いますねぇ。
全く同じセリフでもAさんが言ったのと、Bさんが言ったのでは、受けての感情が180度変わったりするし。
多分、その人の背景みたいなものが言葉には乗っかるんでしょうねぇ。
ほんと、難しいなぁ。

>あじごんさんへ

>小説か、ほっ・・・。

あはは、小説だからといって、作り話でもないんだなぁ、これがw
全くの作り話を書ける人はスゴイな、って思うもん。
私には無理w
自分が経験して、感じて、考えた事しか書けない。
でもでもでも、あじごんさんの「ヒロシマネコ桃太郎」とかすごい好きです。
ストーリーの展開が絶妙だもん。
この際、無理矢理10年にからめて応募して欲しい^^
本になったら嬉しいし、買っちゃう♪
by parana (2005-11-08 01:37) 

yamaki

なんだー。気づかなかった。
小説ね。 それにしてもparanaさんの文章好き。
by yamaki (2005-11-08 07:01) 

失って初めてわかることは沢山あります。
「分かっちゃいるけど止められない」ことも沢山。
「後悔先に立たず」
ものごと全てお見通しなんてことはあり得ないし。
自信満々になったり、クヨクヨしたり人生は大変だぁ!
by (2005-11-08 10:17) 

nikukyu

ネアンデルタール人が、死者に花を手向ける姿を想像すると、
私も胸にぐっとくるものがありました。
by nikukyu (2005-11-20 01:54) 

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