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振り向けばそこに

今、思っても、私はとても暗い子供だったと思う。
両親が離婚したから、とかそういう事ではない。
もう、生まれた時から暗いのだ。

うんと小さい頃、その頃の流行遊びは「お母さんごっこ」だった。
要するに「ままごと」なんですけどね。

誰かがお母さん役をやって、別の誰かが子供役やって~とか、そんな感じ。
草の汁をしぼってジュースとか、泥に水入れてコーヒー牛乳とか。
そんなものを美味しく飲む演技などをしなければならないわけで。
「わーい。いただきまーす。ゴクゴクゴク。おいしーい」とか言いながら。
もうね、これが、私にとって地獄なんですよ。
嫌で、嫌で、たまらなくて。
演技が出来ないの。
恥ずかしくて出来ない。
物心がつくのが早かったのかなぁ。
とにかく、皆と同じように出来ないのだ。
だから、私は、ただひたすら草を石にこすりつけて草ジュースを作り続けた。
演技をしなくてもすむように、誰にも声をかけられないように、ひたすら草ジュースを作った。

暗いな、ほんと。

で、お母さんごっこをしたくない私は一人で遊んだ。
一人の方が楽だから。
近くに小川が流れていて、そこで日が暮れるまで遊んだ。
この土手はどこまで続くのだろう?と上流までひたすら歩いたり、
あと、土手には椿の並木があって、椿の蕾をひたすら分解したり。

今、気付いた。
「ひたすら」系が好きだったんだな、私。

でね、一人で遊んでたって書いたけど、正確には一人じゃなかったんですよ。
いつも、影のようにピタっと張り付いていた男の子がいたんです。
ワタナベ君って言うんですけどね。
ワタナベ君ってのがおかしな子でね、いつも私の側にいたんです。
すると母がからかうんですよ。
「ボーイフレンドのワタナベ君」とか言って。
ほんと、ムカツク。
いや、母だけではない。
二人で歩いてると、
「やーい。デートだ、デートしてる~」とかからかわれるんです。
馬鹿が多くて困るよ、ほんと。

ワタナベ君が変わってるのは、普通こんな風にからかわれるの嫌でしょ?
小学1年生ですよ?当時。
でも、ワタナベ君は全く意に介さないんだな、これが。
私としては非常に迷惑だから、もう側に寄らないで欲しいと思っていた。
思っていただけで、言ったわけではない。
ワタナベ君自体は迷惑な存在では無かったから。

川の土手を一人でどんどん上流に向かって歩いていると、やはり心細くなる。
民家も見えなくなるし、人気もなくなるし、なんだか怖かった。
そんな時、振り返ると、そこに彼が居た。
ちょっと安心して、また歩き出す。
私は、歩いて、歩いて、ひたすら歩いた。
やがて、ちょっとした広場に出て、思わぬ物を見た。

「ヘリコプターだ!!!!」

そこには農薬散布用のヘリコプターが置いてあったのだ。
たかがヘリコプターだが、子供にとってみれば、されどヘリコプターだ。
私は大興奮である。
そして、振り返ると、やっぱりそこに彼が居たのだ。
彼はニコニコしてたような気がする。

私は小学2年生の時、転校した。
ワタナベ君とはそれっきりだ。

いや、それっきりではない。
やがて、ワタナベ君は自力で電話番号を調べたのだ。
その頃って、電話帳に載せてたでしょ?
私の父の名前を探したそうな。
中学2年の時かな。

彼からお手紙が来た。
私が転校した後は、泣いて泣いて一週間泣き続けたと書いてあった。
ごめん、私、全く、泣いてない。
なんだか、申し訳ない気持ちになった。
返事を書かねば!と思っていたのに、どんどん時間が過ぎて、結局返事も書いてない。

そこで本当にそれっきりになった。
あははは。
これぞダメ人間。
最低ですな。

でね、何が言いたいのかって言うと、私はそういう男性が好きなのかもなぁって事。
私のしたい事を邪魔しないタイプ。
応援すらしなくて良い。
何も言わないでいてくれたらそれで良い。

いや、なんかね、夫がそういうタイプなんですわ。
私、今、学校に通ってるでしょ?
実は、なぜか夫も「僕も行く」とか言ってね、二人で通ってるんですよね。
夫婦で通うって、かなーり、恥ずかしい。
で、もっと恥ずかしい事に、二人とも試験落ちてるし。
ダメ夫婦。

振り向けば、いつもそこに夫がいるんだなぁ、これが。


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kugna

私も、近所の同級生と一緒に遊ぶの、
あんまり好きじゃなかったなぁ・・・

家でも、母は下の妹弟にかかりきりだったので、
父の仕事見てたり、祖父の仕事見てたり、
祖母の“アクセサリー”として、デパート巡りつき合ったり・・・
さもなくば、字も読めない頃から、
ひとりで絵本読んでた(声がテープに残ってた・・・)

paranaさん、いいパートナーに巡り会えてよかったですね。
私にもそんな日が訪れるといいなぁ・・・(笑)

ひとりが好きなのと、暗いのとはまた違うと思うよ(半分自己弁護)
(私も、「そっと見てて欲しい」タイプかも)
by kugna (2006-12-15 10:02) 

三ねんせい

はじめまして(だったかな?前から読んでいて,書き込んだことがあったかどうか思い出せない).
私も幼いとき川沿いの道をどこまでも歩いていくのが好きだった.張り付いてくれる女の子はいなかったけれど.
おままごとの演技が苦手なのは,暗いんじゃなくてリアリストなのだと思います.
by 三ねんせい (2006-12-15 10:14) 

ぽん太

最後はごちそうさま(^o^~いいパートナーがそばにいてくれるって 最高ですよ~。
by ぽん太 (2006-12-16 00:28) 

ダージリン

私は、人見知りで社交的な八方美人の独り好き、かな〜。(どれもホント。)

どんなに「友達」と呼べる人が沢山いても、孤独感でいっぱいの人もいるでしょうね。
そう思うと、「振り向けばそこにいる」って言える存在が一人でもいる人の方が、幸せなような気がします。

parana さんの文章、やっぱり好きです。
少しずつ、少しずつ、paranaさんの輪郭が見えて来るような気がします♪
by ダージリン (2006-12-16 17:20) 

Reiko Kato

いい話だ.....
by Reiko Kato (2006-12-16 23:43) 

三ねんせい

初めてはなかったですね,書き込み.失礼しました.

>振り向けば、いつもそこに夫がいるんだなぁ、これが。
いいねえ.私もこんなのろけを書いてみたい.
by 三ねんせい (2006-12-19 00:21) 

マー

うっ、
なんとなく判る・・・

冷めていた子供時代でもありました^^;


「振り向けば・・・」
その気持ちというか、
そんな関係、理想であったりします(爆)
by マー (2006-12-19 23:10) 

parana

>venerdiさんへ

>paranaさん、いいパートナーに巡り会えてよかったですね。
>私にもそんな日が訪れるといいなぁ・・・(笑)

これだけは言えますが、恋愛は所詮ギャンブルなんですよ。(笑)
カードをめくって初めて「アタリ」か「ハズレ」なんです。
カードをめくる前に分かるわけないんですよね。
でね、何が「アタリ」なのかも、恋愛を重ねるごとに段々違ってくるんです。
他人からみた「アタリ」じゃなくて、自分だけの「アタリ」が探せるようになれば恋愛道は極めたも同然かと。(笑)
恋愛道って。(笑)
何いってるんだか。アホだな、私。

>三ねんせいさんへ

あはは。はじめまして、じゃないですね^^

>おままごとの演技が苦手なのは,暗いんじゃなくてリアリスト
>なのだと思います

ありがとうございます。
なんだか照れちゃうんですよね、おままごと的演技って。
女性は上手いですよね、こういう事。
男性は下手だと思うな、多分。
なんか男性ホルモンの方が多いのかもな~、私。

>ぽん太さんへ

>最後はごちそうさま

お粗末さまです。(笑)
いや、別にノロケじゃないですよぉ。でへへ。

>ダージリンさんへ

>私は、人見知りで社交的な八方美人の独り好き、かな〜

あはははは。
なんか分かるなぁ。
駅でね、知り合いを見かけたとするでしょ?私の場合、先ず、ササっと隠れようとするの。
で、隠れようとした自分に自分で「なぜ隠れる?」とツッコミを入れつつ、気合を入れて、「どうも~」って声をかけるんですよ。
気合を入れないとね、他人に接する事が出来ない。
割と愛想の良い人という評価を頂く事が多いけど、でもそれは「気合を入れた」姿なんですよね。
本来の姿はササっと隠れて逃げ出すタイプ。
暗いのよ、ホント。(笑)

>Reiko Katoさんへ

どうもありがとう^^

>マーさんへ

>冷めていた子供時代でもありました

あははは。
私もね、同じ空気感を共有できなかったですね。
どこかで引いて見てる、みたいな。
こういう性格はやっかいですよね。
なんかもっと弾けるような明るさを持って生まれたかったなぁ。
損だな~って思いますね。
by parana (2006-12-21 02:53) 

JOHN

いいなぁ~。「振り向けば」か。ステキな関係です。
ダーリン様にとって、paranaさんはどんな存在なのでしょう。
ダーリン様のお話聞いてみたいなって思っちゃいました^^
by JOHN (2006-12-28 21:40) 

parana

>JOHNさんへ

ダーリン様にとって、私という存在は「匹」で数える存在のようです。
人間扱いしてもらえないのですよ。(笑)
by parana (2007-01-16 02:58) 

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