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出力

スティーヴン・ホーキングという偉大な理論物理学者がいます。

筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)という難病を患っています。

ALSですね。

で、スティーブン・ホーキングは、この病気にかかってから、最も長生きしている人です。

徐々に筋力が落ちていきますからね、かなり怖い病気です。

でも、脳だけは、元気なんです。

脳は筋肉じゃないですから。

だからこそ、怖いんです。

脳だけ正常で、あとは動かないって、逆に辛いと思うのです。

じわじわくる恐怖と真っ向から対面しなくてはならないから。

しかし、このホーキング博士、めっちゃ明るいんですよ。

常に、冗談を言って周りを笑わせるんです。

パーティも大好きで、どこへでも出かけます。

シャンパンもスプーンですくってもらって飲んでます。

介護者の女性の方も、これまた明るい。

恐らく、介護は大変だと思うのですが、そんな雰囲気を出さない。

どんだけメンタルが強いんだ、と感嘆する。

いつ死ぬか分からない、それはどうにもならない、とホーキングも介護者も開き直ってる風情です。

もっとすごい事に、ホーキングは雑多なことに煩わされずに研究に没頭できるからラッキーだと言っているのです。

普通の人達は、日常のアレコレに煩わされて、思考を中断させられるけど、自分は違う、と。

通常のものさしでは測れない人。

で、ホーキング博士なんですけどね、ちょっと前までは、手でカーソルが操作できていたんです。

それが、手も動かなくなって、今は頬の筋肉で操作しています。

そのうち、頬も動かなくなるらしい。

何度も言いますが、脳は正常なんです。

博士の脳の中には広大な宇宙が拡がっている、とのこと。

その広大な宇宙ですが、今のところ、出力は頬の筋肉を使った操作です。

ものすごくかすかな出力です。

で、それも不可能になったら?


こうやって考えると、なんでもそうなのかな、と。

樹齢2000年の樹が色々考え事をしていたって、私たちには受け取る術がない。

宇宙規模で広がる真理を追究していたとしても、出力がなければ、分からない。


私たちは人間の脳であれこれ考えて、色んな手段で出力をしている。

でも、出力装置がなかったら?

受信装置もなかったら?

そこには「無」しかない、と思うだろう。


でも、あるんです。

少なくとも、ホーキング博士の中には広大な宇宙規模の意思があるんです。

出力ができなくなるだけ。


それを「無」とはいわないだろう。

でも、受信できなければ、「無」と思う。


そんなことが、実はたくさんあるのかもしれないなぁ、と思う。

受信できてないだけ。


どんな物質だって、実は、いろんなことを考えているのかもしれない。


禅という興味深い思想がある。


西洋では、まず、自分が「在る」ということから出発する。

しかし、禅は、まず自分が「無い」ということから出発しようとしている。

「無い」状態にすると、まわりの物質と一体になれる、と。

面白い。

こういう、何も役に立たないことって面白い。

屁の突っ張りにもならない。

でも、ここにしかないじゃないかな、って思う。

何が?

突破口が。


私たちはもう一度「混沌」に戻る方が良いと思う。

混沌とはなんぞ?

これは、荘子ですね。

簡単に訳すと。

南に儵(シュク)という帝がいて、北に忽(コツ)という帝がいた。

中央の帝は混沌(コントン)という。

あるとき、シュクと、コツはコントンに所に行った。

コントンはシュクとコツを歓迎した。

シュクとコツはたいそう喜んでコントンにお礼がしたいと思った。

「人間には7つの穴があって、その穴で見たり、聞いたり、食べたり、息をしたりしている。
コントンには何もない。よし、コントンのために穴を空けてあげよう」

シュクとコツは、一日一個、コントンに穴を空けた。

七日目にコントンは死んだ。


荘子もなかなか面白い。

混沌は、混沌のままでよかったわけです。


人間が、この混沌に向かおうとするのが、禅なのかな、と。

私の解釈ですけどね。


出力装置のない物質。

「無い」と観るのか「在る」と観るのか、面白いですねぇ。





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コメント 4

マー

性善、性悪説とはまた切り口も変わり、混沌も入るとこれまた素直に面白いなって思う。まぁ素人考えですけどね(^^ゞ
でも混沌って秩序を秩序たるものにするにはやはり必要というか、「必要」って使っちゃいけないような・・う~~ん・・^^;
でもね、
先日「もうだめか!」となった我が家のニャンコ(かるく20歳以上)が奇跡の生還を果たしたんですわ。そんな事もあったんだけど都度思うんだけどね、ニャンコの中にはそれこそ宇宙があると思うんですよ!
で、ババ様が良く語りかけてるんですよニャンコに。
「お前は馬鹿だねぇ~人様の言葉分からんか?喋ってみ!」って。

・・・ニャンコもそう思ってるのになぁ(笑)
すいません、なんか逸れました(^^ゞ


by マー (2014-10-28 23:26) 

parana

>マーさん

混沌、面白いですよね(^^)
屁の突っ張りにもならない話ですけどね(笑)
人間の7つの穴、つまり感覚器官なんですけどね、
これがあるから、人間は惑うんだろうなぁって。

マーさんとこのニャンコ先生、すごいですね。
うちのこ達も長生きしてほしーい!!

ニャンコの中には宇宙(コスモ)を感じますよね。
聖闘士星矢か、って(笑)
by parana (2014-10-29 21:38) 

アキオ

我は無い、故に我あり。。

意味が分からなくなってくる、、
考えて行くと。。

でもわからない事が本質だったりしてw
by アキオ (2014-11-02 08:59) 

parana

>アキオさんへ

わからない事が本質なのでしょうね。
で、わからない事を、考え続けるのが、ちょっと面白いな、と。
屁の突っ張りにもならんですけどね。
これもまた業なのかな。

コメントどうもありがとうございます(^^)
by parana (2014-11-08 08:19) 

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