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偏屈な人 [雑感]

偏屈だ、と言われたり、思われたりする人がたまにいる。
大抵は悪い意味だ。
我がまま、とか、協調性がない、とか、生意気だ、とか。

会社に入って間もない頃、そういう偏屈だと思われている先輩がいた。
愛想笑いなんてしないその先輩は、とりわけ年上の人達に評判が悪かった。

その頃の私は、同期の新人の中で最も「出来ないコ」だった。
他の新人さん達よりも何をやらせても遅いのだ。
教えてもらっているのに、私はさっぱり分からないといった風情でポカンとしていたと思う。
当然、教える側はイライラする。
だから、とても嫌われていたような気がする。

ある日、課題として与えられていた仕事が出来ない日があった。
午後6時を過ぎても出来ない私の周りに先輩達が集まってきた。
4、5人はいたと思う。
皆「どれどれ?」といった感じで私の仕事を見た。
理解していない私の仕事はとても珍妙だったのだろう、クスクスと笑い声も聞こえた。
「ねぇねぇ、なんでこんな風にしてんの?」と聞かれたりした。
自分でも訳が分からずやっているので、答えに窮したし、クスクス笑いながら聞かれるので屈辱感で一杯になった。
でも、現実的に出来ないのだから、なんとかせねばならないわけで。
そのうち、先輩方も一緒に考えてくれた。

あーすれば?と言われればその通りにした。
こーすれば?と言われればその通りにした。
しかし、一向に問題は解決しないのである。
あーでもない、こーでもない、という風に1時間くらいしたら、先輩達は飽きてきたのか、帰ってしまった。
私は散々カラスに突付かれた小動物のようにみすぼらしい様子になっていたと思う。

午後八時を過ぎて、例の偏屈な先輩が出先の仕事から戻ってきた。
私のヨレヨレした風情を感じたからだろうか?
「どうしたの?」と声をかけてくれた。
私は経過を説明し、どうやっても上手くいかないと伝えた。

「どれどれ?」と先輩は私の仕事を見てくれた。
2分くらい経っただろうか、「ここ」と指を指された箇所があった。
先輩に言われた通り直したら、すぐに出来てしまった。
私はとても感激した。
先輩が魔法使いのように思えたのだ。
そして、
「どーしてすぐに分かったんですか?」と尋ねた。

すると、
「うん、僕も同じミスをした事あるから」と答えた。

それまで散々嘲笑され、自分に自信が無くなっていた私にとってその言葉はとても嬉しかった。
しかし・・・・と考えた。
では、あの4、5人の先輩方は何だったのだろう?

とにかく、私は偏屈だと言われている先輩を頼った。
「今度こういう仕事をするので、サンプルになりそうなものがあったら欲しいのですが」
と、お願いをした事もある。
すると翌日、会社の机の上に紙が置いてあった。
前日に頼んでおいたサンプルである。
そして、その上に一枚の紙片が置いてあった。

読むと、
「一かけ、二こすり、サンプール」
と書いてあった。

数年後、カラスのように私を突付いた先輩方は次々に会社を去っていった。
社長に言わせると、「仕事が出来るフリをした連中」という事だった。

偏屈な人って実は優しい人が多いのかもしれない。


しっぽ [雑感]

この世には「見えない尻尾」を持つ人がいる。
いや、私だけに見えない尻尾というべきか。
不思議な事に、周りの皆には見えているんですよ、それが。
だから、ヒョイヒョイと器用にその尻尾を除けて通り過ぎる事ができるわけです。

会社に入ってまだ間もない新人の頃、週末にテニスをしましょうと誘われた。
誘ってくれたのは社内で一番年上の女性だった。
私はテニスなどした事がないし、週末は家でゴロゴロしたかった。
だから、私は軽い気持ちでその誘いを断わった。

でもね、これは断わっちゃいけなかったんです。

「あれ?なんだか風当たりが変だぞ」と気付いた時にはすでに遅かった。

親切な人がコッソリ教えてくれた。
「せっかく誘ってあげたのに断わるなんて生意気だ!って怒ってたよ」って。

思えば、私以外の新人さん達は皆参加していた。
新人の中で断わったのは私だけだった。
「へ~、みんなテニスが出来るんだ~すごいなぁ」と単純に思っていた。
でも、違うんだなぁ、これが。
テニスが好きとか出来るとかの問題ではなかったのだ。

私にはこういうトラブルが多い。
新人の頃だけという訳ではなく、それからも度々こういう事があった。

私は嘆いた。
「どうして私は嫌われるんだろう?」って。

そしたら、気の良い後輩が、
「パラナさんは尻尾が見えてないですもん。思いっきり踏んでますよね、いつも」
と、笑いながら言った。

ガーーーーーーン。

知らんかった。
尻尾が生えていたのかっ!
しかも、皆には見えてるんだね。
でも、私には見えない。

で、踏む。
で、怒らせる。
で、嫌われる。

なんだか謎が解けたような気がした。

いや、尻尾のない人も多いと思う。
そういう人とは上手くいく。
嫌われるような事もない。

でも、中には、「どんだけ尻尾があるんだよ?」っていうような人もいると思う。
8本くらいあるのは狐の妖怪だっただろうか?
あれ?9本だっけ?

まぁ、いっか。

そんな訳で、尻尾を踏んでは「シャー!!」っと威嚇され、引っ掛かれてしまうわけです。

イタタタタタタ。

ところで、尻尾の生えている人って自分の尻尾の存在に気付いているのかなぁ?
皆除けて通ってくれてるんだから、その事に感謝しなくちゃいけないよ、って思う。

私は踏むけどね。(笑)


希望的観測 [雑感]

食材の良し悪しなんてあんまり分からない私です。
よく分からないから、「ちょっと良い感じ」に見える食材を選ぶわけですが。

昔、スーパーで鶏肉を買うとき、ある産地の鶏肉を買っていた。
ちょっと高かったけど、高いからこそ「良いもの」だと単純に思い込んでいた。

で、産地偽装が社会的な問題になり、その「ちょっと高い鶏肉」も産地偽装であったと判明した。
いつも行くスーパーから、その高い鶏肉は姿を消した。
その変わり、「健康鳥」とかなんとか、別のシールが貼られて売られるようになった。

そう、私はずーっと騙されていたのだ。

で、今、スーパーに行くとお肉のコーナーは実に産地が豊かだ。

「ブラジル産」
「USA産」
「オーストラリア産」
などなど。
もちろん「国産」もある。

どこまで信じていいのか分からないけど、昔は全部これらは「国産」だったような気がする。
それから比べれば随分と「正直」になったもんだと思う。

今、マンションを買おうかな~って人は少ないと思う。
信用できないからね。
でも、これから先、建つマンションはもしかしたら「正直」なマンションが多いのかもしれない。
そうなるといいなぁ。

という、希望的観測。

建築基準法がザル法と呼ばれて久しいわけですが、これを機にどうかザルの目が細かくなりますように・・・。
エライ人達、そこの所どうかよろしくお願いします。


そこから先なんですよ本当は [雑感]

小学生の頃、飛び箱が得意だった。
それこそ、もう、自分は何段でも飛べちゃうんじゃないかってくらいに。
あれは、何段だったんだろう?
体育館にズラーっと並べられた飛び箱。
左から順に、2段、3段、4段・・・という風に右に行くほど高く積み上げられた飛び箱。
各自、飛べる所で飛んでくださいみたいな趣旨だったような。
私は一番右端の一番高く積み上げられた飛び箱を飛んでいた。
多分、飛ぶ事が面白くて嬉々としていたと思う。

で、中学生の時、体育の時間に飛び箱をやることになった。
先ずは、3段。

飛べない。

あんなに得意だったのに、3段の飛び箱すら飛べなくなってしまったのだ。
なぜか?

それは恐怖心が芽生えたから。
失敗した時の悪いイメージが頭の中に浮かぶようになったのだ。
実際に失敗して痛い目に合った事はないのに。
もう昔のように思いっきり踏み込めなくなってしまった。
そこから先は恐怖心との戦いだったような気がする。
「怖くない、怖くない」と自分に自己暗示をかけるような感じ。
それでも、なかなか飛べなくて・・・あの時は本当に困ったなぁ・・・。

多分、恐怖心が芽生えるって事は、大人になった証拠だと思う。
思慮深くなったというか。
あらゆる最悪な事態を想定できるようになったというか。
だから、飛べなくなったのは残念な事だけど、失敗のイメージもなく飛び続ける事の方が本当は危ない事なんだろうなぁって思う。

なんでもそうだけど、人ってイケイケドンドンな時期があるような気がする。
上昇気流というか、上がる事しか想像できないというか。
飛ぶ鳥を落とす勢いといったりもするだろう。

梯子をすごい勢いで、上へ、上へと登っている時は案外怖くないものだ。
さて、自分はどのくらい登ったかな?とふと下を見た瞬間、あまりの高さに目がくらみ体が凍りつく。
そうなってしまったら、もう上る事も、下りる事もできなくなってしまって、梯子にしがみついてしまう。
そんな感じ。

人は時に、イケイケドンドンな人を褒め称えるものだ。
そして、自分自身も、その頃の自分が輝いているような気がするものだ。

でも、私は思うんだけど、その頃って実は単に「バカ」なだけなんじゃないかな~って。
思慮が浅いからこそ出来た事なんじゃないの?って。

本当の戦いって、恐怖を踏まえた上で、それでも、泣きながら、ビビリながら、あらゆる悪い事態を想定しつつ、それに対する防御を固めつつ、周囲の様子にも気を配りながら前に進む事なんじゃないかな~って思う。
周りから見てもちっとも格好良くないし、ヨタヨタと実に不様な様子で前に進んでいるように見えるかもしれない。
でも、本当はそれが一番カッコ良いと思う。

本当はそれが一番カッコ良いんだよ。

恐怖を知った時からが本当のスタートだと思うんだ、なんでもね。


くろひげ危機一髪的な [雑感]

私の交友関係は滅茶苦茶狭いです。
それはもう、私の性格が原因です。

で、こんな私ですが、この度、お世話になった方がめでたくご出産をされました。
それはそれはお世話になった方ですので、ここは一つ張り切って出産祝いを贈りたいなと考えたわけです。
「わーーー!ありがとーーー!すっごい嬉しいー!」って言ってもらえるものを贈りたいな、と。
渡した時に彼女が喜ぶであろう姿を想像(妄想)しニヤニヤしつつ、

「あぁ!とびっきり喜ばれるものを贈りたいっ!!」

と、思ったわけです。

でも、私には子供がいないので、正直どういったものが喜ばれるのは分からないのです。

そこはそれ、このインターネットという便利なものを使えばタラララーンと瞬時に情報が掴めてしまうわけで。

グーグル先生、やっちゃってください。

『出産祝い(ブランク)貰って嬉しかったもの』

タラララーン

うん。

結果はすぐに出たよ。

さすがグーグル先生。

匿名だから皆本音を書けるよね。
とても良い事だと思う。

でもね、でもね、その結果を受け止める事ができないんですよ。

『現金』(金券含む)

って。

最初にその文字を見た時、「グサ」って短剣を刺されたような気がして。
でも、次から次に『現金』って文字は出てくるわけで。
その度に、「グサ」「グサ」と短剣を刺され、なんだか自分が黒髭危機一髪の樽になったような気がしました。

「わーーー!ありがとーーー!すっごい嬉しいー!」

の妄想の中に現金は入ってなかったので、なんというか、こう・・・。

もちろん、「服」とか書く人もいるけれど、そういった事の後には必ず、
「えーー、服は好みとかサイズもあるから、貰っても嬉しくなーい」みたいな事が書かれているわけで。

じゃ、何なら文句が出ないんだ?って調べると、そこで結局、『現金』なのです。
あと、「ママにアクセサリー」ってのもあんまり文句が出てないようです。
あと、「紙おむつ」などの消耗品類(もちろん銘柄指定)。

なんだか、とても、疲れました。

私は時々幻想を抱きすぎるのです。
現実を知りたくないというか、見たくないというか。
もっと世界はポヤポヤとした暖かいものに包まれていて、愛だの平和だのと能天気に叫びたいなぁ、っていつも思っているのです。

まぁ、図太い私がこんな事でへこたれる訳もなく。
体に突き刺さった短剣は無表情にサッサと片付けるわけで。

さ、かわいいベビー用品でも調べるか。
とショッピングサイトを見て回り、まさにポヤポヤ~としていて、胸がキューンとなるような可愛いベビー用品を見てすっかり立ち直ったわけです。
本当に切なくなるほど可愛いね、ベビー用品って。

まぁ、プレゼントなんて結局自分の好みの押し付けなわけで。
でも、それでいいじゃないか、と自分を納得させて、

「わーーー!ありがとーーー!すっごい嬉しいー!」

と言われる事を妄想をしつつ、注文ボタンをポチっと。

たとえ、それがヤフオクに出品されたとしても・・・ね・・・。


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